木造スケルトンが建築業態と市場をどう変えるか

 FSU工法の開発を始めた時は、在来の軸組工法の本流から外れて、明らかに別の道を歩んでいるような感じがしていました。しかし最近気が付いたら、本流の在来工法も同じ方向を目指して進んでいる感じがしています。
 在来工法の設計は構造も表現も自由で、工法として洗練化され、どんな建築も可能であり、工法としては申し分ないと今でも思っています。ただ一つ、構造躯体が社会の変化に追随しにくく、使用形態が大きく変化して建て替えざるを得ない場合、解体材は焼却もしくは廃棄となり、環境負荷を増大させてしまいます。FSU工法の開発はそれを避けるため、解体材を再使用できる構造にしようと始めたものでした。
 従来工法は、建築需要の衰退から、受注競争が激しく、市中では加工場を維持し続ける事も困難になり、職人不足も相まって生産の合理化を迫られ、構造材をプレカット工場で加工するようになり、造作材や家具建具も工場加工となり、極力現場加工を削減してきました。今、合理化できずにいるのは、上棟後の筋交いや間柱及び下地の合板やボード貼りの上、内外仕上げと造作工事の現場作業です。それらも何とか減らそうとしています。
 FSU工法は、最初から解体後の廃棄物を出さないために、建築の解体とその部材の再使用が容易となることを目指していたので、部材の構成を単純かつ出来るだけ工場加工とし、現場作業を少なくしてきました。その結果、躯体壁がそのまま仕上げにも出来る壁パネルを工場加工し、それを現場で建て込んでお終いという工法になりました。これは現在、従来の工法が生産合理化と職人不足から否応なく、行こうとしている方向と同じです。結果として傍流を歩いていたFSU工法がいつの間にか、躯体づくりでは前にいたのです。
 しかもFSU工法は建て込んだ時は既に仕上げにも出来る壁があり、屋根を仕上げ、サッシを取付ければ、外界から隔離できる木造スケルトンの空間が完成します。つまり建築上の一区切りができ、スケルトン工事とインフィル工事とを分ける事が容易になります。
 今日の木造建築の構造材の刻みは既に殆どプレカットになり、外注工事化しており、建築市場もリフォーム工事が大半を占めるようになっていて、間柱・筋交いや内外仕上げが外注工事化できれば、リフォーム事業者で十分建築を完成させることができます。むしろリフォーム工事では職人も多くの職種をこなす多能工になっていて、より生産が合理化されています。となると、専業化した方が作業も慣れてスピードアップし、多少遠くから来ても仕事の手離れがよく、収益も上がると考える事業者が現れてもおかしくありません。また加工場を維持できない町場の工務店もそのスケルトン事業者から供給(OEM)を受けた方が楽で収益も上がると考えることも容易に想像できます。つまりスケルトン事業者とインフィル(リフォーム)事業者が分離して存在した方が合理的に見えてきます。
 これはFSU工法の壁パネルの生産体制があってこそ可能です。壁パネルの供給が受けられれば、基礎工事や足場を用意する鳶職のような事業者も建築の請負が可能になります。この壁パネルの生産事業者となる可能性があるのは、軸組のプレカット工場か木材供給事業者の製材所又は林業事業者、もしくは広い下小屋を持っていて、建て込み工事までを行う工務店等がパネルまで製作しようとするパターンも考えられます。
 インフィル事業者は現状のリフォーム事業がそうなっているように、多くの職種から参入してくることが考えられます。 
 こうなると市場も、これまで設備等全てが備わっていた建築の価格を相場と思い、最初から諦めていた人も、スケルトンなら半値程度だと分かると、建築が身近に感じられ、建築しようとする人にはハードルが低くなり、需要を喚起する事になります。
 また建築をしたいと考える人も、スケルトン状態からどの程度仕上がった建築を自分は欲しいのかを改めて考える事が出来、インフィル工事での装備の選択肢が広がります。DIYの需要が増えるとインフィル部材の需要も多様化し、市場も広がり、供給事業者も多様な産業から参入して来る可能性があります。 
 また、スケルトン供給が一般的になれば、多くの人と接する窓口がある者なら誰でも建築受注窓口が可能になります。住宅程度なら一人大工はもちろん、どの職種の者も請け負う事が実質可能になります。他の産業からの参入も容易になり、不動産業や大手家電メーカーは既に参入していますが、ホームセンター等の参入も時間の問題かもしれません。あるいはヤクルト販売のおばさんや、スーパー・コンビニ等が窓口化するかもしれません。この流れは好むと好まざると関係なく時代の必然のように思われます。
 このように建築の受注が多様化し、各業種が流動化するようになれば、本業の建築事業者は生産の合理化をしつつ、自社のブランドイメージをより鮮明に確立しないと埋もれていく危険性が増々高くなっていきます。
 設計者もFSU工法でなら準耐火構造が容易になり、公共事業での保育所や福祉施設等ではインフィル部分が少なく、この工法壁パネルを活用するケースが多くなります。FSU工法の現場では後処理が殆ど出来ないため、殆どが事前の工場加工となり、自由設計のスケルトンの場合でも、計画段階から構造の最終形までをかなり詳細に詰めて設計する必要があります。またインフィルをどの程度まで備えるか、その判断が多様に求められるので、設計に対する重要性も増すと考えらえます。